おすすめの1冊

読んでおきたいこの1冊

みなさん、こんにちは。DIC学園熊本校の小山です。

今回は高校生の方にお勧めの本を現代文・古文・漢文と分けてご紹介します。

◎現代文編

筑摩書房『高校生のための科学評論エッセンス ちくま科学評論選』

まずご紹介しますのは『ちくま科学評論選』です。こちらは、筑摩書房が「高校生のための現代文アンソロジー・シリーズ」として出版している中の最新刊です。題名でお分かりになるように「科学評論」を収録しています。古くはパスカル(圧力のパスカルの原理や、高校数学でもおなじみのパスカルの三角形の人です。『人間は考える葦である』の名言でも有名ですね)現代ではあの将棋棋士の羽生善治さんの文章が掲載されています。扱っている内容も科学の思想史から、環境論、さらにはアインシュタインの「特殊相対性原理」までと一般的なものから専門的なものまで多種多様です。

科学評論と聞くと、それだけで尻込みしたくなる方も多いと思いますが(私も決して得意ではありません)、そんな人にこそ読んでもらいたい1冊です。科学とは、私たちと独立して存在するのではなく、私たちの日常と密接しながら、同時にその日常の常識を破壊して新たな真理を見つけようとする不断の努力であることを思い知らされる1冊です。

入試関連で言いますと、昨今、現代文の出題が評論のみという大学が増えております(特に私立文系学部)。そういう状況下で評論の読解というのは、センター試験をも含めて避けられない技術の一つです。理系・文系問わずに楽しみながら評論読解のスキルを上げるのには最適の1冊と考えます。読んで目からうろこが落ちる思いがする評論ばかりです。現代文、特に評論が…という人に強くお勧めします。

◎古文編

大修館書店『新 全訳古語辞典』

え、辞書なの、と思われた方。はい。その通りです。しかし、ご紹介するだけの価値がある辞書なのです。この辞書の大きな特徴の一つは、通常の古語辞典であれば、巻末に置かれることが多い「名歌名句辞典」と「古典常識・古文文法解説」を、語句解説の間に挟み込んでいることです。つまり辞書のセンター付近に配置し、みなさんにより読んでもらいやすくしているのが私の最大の評価ポイントです。

古文を学習されている皆さんであればお感じになることと思いますが、古文単語をおさえるだけでは、なかなか上手に古文を現代語訳できないことがありますね。そうした場合①古典常識・②文法の知識などが不十分であることが多いのです。

例えば、時点でも説明されていますが、次の例を考えてみましょう。

A いつしか梅咲かなむ

B いつしか梅咲きなむ

この二つ大して違いはなさそうですが、Aは「早く梅が咲いてほしい」となるのに対し、Bは「いつかきっと梅が咲くだろう」と現代語訳されるのです。この違いはどこからくるのでしょう。それは赤字でお示しした「なむ」の違いからなのですが、では、二つの「なむ」が違うことがなぜ分かるかといえば、それは、「なむ」の前の語である「咲か」が「咲く」の未然形であるのに対して、「咲き」は「咲く」の連用形という違いからなのです。

つまり、未然形に付く「なむ」は願望の終助詞(他に対して「~してほしい」との意を表す)であり、連用形に付く「なむ」は完了(強意)の助動詞「ぬ」の未然形+推量の助動詞「む」となり、「きっと~だろう」となるとの解説が、辞書の中ほどにかなりのスペースを割いて展開されております。その他にも「和歌がわかれば古典がワカる」というようなタイトルを見ただけで、胸がワクワクするようなコラムが満載です。

もちろん、上記の説明は他の辞書でも行っておりますが、その位置を辞書のど真ん中に置いた配置の妙を評価したいと思います。読んで面白い辞書です。ぜひご一読を。

◎漢文編

筑摩書房『高校生のための古典ライブラリー 漢文名作選 故事成語編』

最後にご紹介するのは、『漢文名作選』です。これは、「人口に膾炙」している故事成語の原文を1冊にまとめたもので、あの「故事成語はここから来ていたのか」という新たな発見・驚きを与えてくれる本です。

論より証拠。一つご紹介します。「大器(たいき)晩成(ばんせい)」です。出典は『老子』からです。

【書き下し文】

上士(じょうし)は道を聞けば、勤めて之を行ひ、中士(ちゅうし)は道を聞けば、存するがごとく亡きがごとく、下士(かし)は道を聞けば、大として之を笑ふ。笑はざれば以つて道と為すに足らず。故(ゆゑ)に建言(けんげん)之有り。道に明らかなるものは昧(くら)きがごとく、道に進むものは退(しりぞ)くがごとく、夷道(いだう)は類(るゐ)なるがごとく、上徳は俗なるがごとく、大白(たいはく)は辱(じょく)せるがごとく、広徳(くわうとく)は足らざるがごとく、建徳は偸(とう)なるがごとく、質(しつ)真(しん)は渝(ゆ)なるがごとし。大方(たいほう)は隅(ぐう)無く、大器は晩成し、大音(だいおん)は声希(な)く、大象(だいしやう)は形無し。道隠れて名無し。夫(そ)れ唯だ道のみ善く貸し且つ成す。

【口語訳】

 知性や徳がとても優れている人物が(万物の根源である)道のことを聞くと、(これと一体化しようと)努力して実践し、中くらいの人物が道のことを聞くと、よくわからず半信半疑で、下等な人間が道のことを聞くと、大げさだといって嘲り笑いだす。(だがこういう者たちに)笑われないようでは(真の)道とは言えない。だからこそ昔から言い伝えられている。真に明るい道は一見暗く見え、前に進む道は逆に後ろに下がっているように感じ、平らな道はでこぼこのように思え、素晴らしい徳は俗っぽく見え、真の純白さは汚辱にまみれているように見え、広大な徳は物足りなく見え、揺るがぬ徳は投げやりに見え、質朴さや誠実さはご機嫌取りに見える。どこまでも大きな四角は隅(を見つけること)がなく、(万物を容れる)大きな器はゆっくりと完成し、とてつもなく大きな音は人の耳には聞こえず、無限に大きなものは形を認識できない(と言われているのだ)。道は人の目には映らず隠れた存在で名づけようもない。そもそもただ道だけがしっかりと(万物に力を)貸し与えて完成させるのだ。

いかがでしょうか。相当に難解な文章ですが、『老子』特有の逆説的な文章の中に置いて見ると、なるほどそうなのかと思わせるものがありますね。これを含めて計54篇の文章が収められています。上記のようにきちんと、書き下し文と口語訳も付いておりますので、どなたでも安心して楽しめます。我々の思想のバックボーンを形作るところもある漢文の世界を味わってみませんか。

今回は、通常の問題集・参考書とは違った観点からお勧めの1冊を現代文・古文・漢文とご紹介しました。少しでもお役に立ちましたら幸いです。

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